経済対策「事業規模108兆円」とは 実態反映せず皮算用

2020年4月10日 02時00分
 政府が7日に決定した経済対策では、安倍晋三首相が「事業規模は国内総生産(GDP)の2割の108兆円」と述べ、巨額対策を印象づけました。実際は、国が新たに支出する2020年度一般会計補正予算は16兆7000億円しかありません。事業規模とは何なのでしょうか。 (吉田通夫)
 Q 対策費はどのように工面するのですか。
 A 新たに支出する十六兆七千億円はワクチン開発や家庭への給付金などに使われ、その財源は政府の借金である国債です。また、使途が決まっている特別会計の支出計画を一兆九千億円分変更し、政府は雇用調整助成金などに充てます。昨年十二月につくった経済対策で使っていない予算など六兆四千億円分も加えると、国費としては計二十五兆円を支出します。
 Q 国費以外のお金も使うのですか。
 A 政府系金融機関などを通じて低利や無利子で企業に融資する財政投融資十二兆五千億円のほか、一部事業に地方自治体も二兆円を支出予定。この結果、国費を含めた国と地方自治体の支出は計三十九兆五千億円となります。
 この三十九兆五千億円を、安倍氏は政府による直接支出で景気を押し上げる「真水」の数字と説明しています。ただ、財政投融資はあくまでも融資で「真水とは言えない」(エコノミスト)との意見もあります。
 Q 三十九兆五千億円に対して、事業規模は百八兆円と三倍近くの金額になっているのですが。
 A 企業が国の補助を受けて機器などを購入する場合の民間拠出分を推計し、真水を呼び水にして動くお金として四十二兆七千億円を上乗せしています。企業の納税や社会保険料の支払い猶予分の計二十六兆円分も事業規模に含んでいますが、実際にその額になるかは分かりません。
 Q 不確かな数字を加えて良いのですか。
 A 政府は経済対策の金額を毎回、事業規模で示しています。しかし政府が実際に動いた金額を検証することはなく、「水増し」との批判が絶えません。今回は、ドイツの対策規模が国内総生産(GDP)の20%にのぼるとして自民党が同水準を求め、政府は過去の経済対策の残りまで加えました。額面ほどの実効性を疑う声が早くも上がっています。

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